いなくなってあたらしくなったマスコットのおはなし

ここ数年、週末にはスポーツマスコットやゆるキャラを追いかけるような生活を続けてきた。そこでは良いことも悪いこともあったし、それぞれがちゃんと思い出なんだろうと思う。特定のマスコットには憶えてもらえるほどに通ったと思うし、縁も所縁もない土地で開催されるようなイベントに行くこともあった。

最初は小瀬スポーツ公園の駐車場争いで近場を取りたいがために早い時間にいってもやることがなく、時間つぶしで見始めたマスコットイベントだけれども、いつの間にかそれが中心に入れ替わっていたようにも思う。一番のメインは試合だとしても。

会話そのものをあまり楽しみたくない自分のような一人でいることが最優先な人にとって「しゃべれない」マスコットというのは非常に心地よい存在で、基本的には相手は自分にべったりし続けているわけにもいかないので、絡みのある程度の時間限定になるところも良い。

あくまでも裏方ではあるけれどしっかり目立つ存在であるというポジションも良い。もちろん一部のマスコット、ゆるキャラは主役である場合も多々あるけれど、そこはかなり特殊な環境なんだと思う。

一方で、極端な話、マスコット自体はいなくても運営に支障をきたす存在ではないし、いないならいないでも時間は過ぎていく。絶対の存在ではない、ということがしばしばある。

Jリーグや、Bリーグなど多数のチームが存在するプロスポーツでもイラストとしては発表されていても、その後の動向が見られなかったり、現在進行形でいるのに、ホームゲームでさえ見ることができなかったり、基本的に持たないスタンスで進めているチームもある。現在進行形でマスコット変更の流れを進んでいるチームもある。

 

本題。居なくなり、新しく迎えられたマスコット達の事。

 

ひとりめが2018年末に出会った「tex」というB3リーグ・東京エクセレンスのマスコット。

正直なところ、エクセレンスを見に行ったきっかけはその日の対戦相手が鹿児島レブナイズで、前回の試合開催時にレブナイズのマスコット「れぶにゃん」が遠征していたこともあり、あわよくば会えないかなと思ったのが始まりでtexそのものにはあまり興味がなかった。けれども実際に会って写真を撮って、開場から退場まで間、ずっと楽しませてくれるtexの存在はとても特別なものだった。お世辞にも見た目はイケメンとは程遠い造形で、運動神経も良い感じに映らない。ぼこかぽや~んとしている雰囲気で、外見ではない内面にとても惹かれた。

結果としてそのシーズンに9試合とゲストで呼ばれた1試合に行き、時にはサッカーのホームゲームよりもバスケットを選んだほどに好きになっていた。チームも好調で、ホームゲーム全勝でB2リーグに上がるんだとなった矢先、別れが訪れる。

契約権利上の問題らしいが詳しいことはわからないが、texとはもう会えないことになった。なんでだろう、権利だったら買い取れば何とかなるんじゃないのか、とか、活動の制限はされるかもしれないけれど、再契約してまた会えるんじゃないのかと、思っていた。思っていたけれど再度会えることはおそらくもう無いのだろう。

その年、B2リーグで戦うエクセレンスを見に行くことは1度しかなかった。

見に行った時に突き付けられる「ここにはもういない」「もう会えない」という喪失感が強くて、アリーナに居ることが辛かった。たった半年の触れ合いだったのに、とても大きな存在だった。

ニュースページの結果で数字を追ってシーズンを苦しんていることや、チームのアリーナ問題で降格になる話も見て聞いてはいた。大変なのだろうと思っていた。そうしている間に2020年からのコロナ禍となり、無観客試合の開催。感染症であまり閉鎖空間での開催には足が向かなくなり、2021年までバスケットを会場で見ることは無かった。2021年にまたアリーナにバスケットを見に行くことになったけれども、マスコットの存在がなく、好きな選手も移籍してしまったエクセレンスを見に行くことは無かった。

そうこうしている間にエクセレンスが東京から横浜に移転。「tex」の名前は「東京」から来ていることから、完全な決別を意味しているのだと、これで本当に最後なのだと思った。そして別の存在になったことで、見に行けるようになった。2022年の元日開催に足を運んだ。もちろんマスコットはいない(横浜グリッツのグルーガがゲストで来てはいたけれど)。いないことを選んだチームになったと思った。そう思って2021-2022のBリーグシーズンが終わった。東京エクセレンス時代からの選手がまた多く離れていった。ここでひとりめの「tex」の話はおしまい。

たった半年なのに、これほどまでに思うとは思わなかった。いまはただ「ありがとう」と思うだけだけれど、いつかまたどこかでひょっこり会えると良いなと思っている。

 

ふたりめが「ユナイト」というB3リーグ・東京ユナイテッドBCのマスコット。

2021-2022シーズンが終わり次のシーズンが始まるまでの期間、突然出会った。たまたま見ていたツイッターのタイムラインに流れてきた青いウサギのマスコット。その最初のイベントがたまたま別のサッカーの試合を見に行くついでに見れるということで会いに行った。その時は東京ユナイテッドBCというチームが何なのか知らなかった。会った最初の印象は「動けるかわいいマスコット」。期待の高さもあって、早速チームの事を調べた。調べて最初に驚いたのが、元エクセレンスの宮田選手が中心になって新規に作るチームだった事。そしてまだチームとしてメンバーも揃っていない状態でマスコットが発表されていた事。

マスコットがいなくなってしまったチームの選手が新しく立ち上げたチームが初期動作でマスコットを出してきた。エクセレンスの選手とtexの関係は全選手が良好に見えていたのでユナイトの存在はとても嬉しかった。

ただ、まだ新規の状態なためか「お仕事感」がわずかに強く感じてしまうのが気になる部分かな、と。会場で積極的に絡んでくれる宮田選手も嬉しいけれど、もっと全部の選手と絡んだり、フレキシブルに動けるようになるととても面白いマスコットになれると思うのでいろんな人に、いろんな場所にどんどん出会ってほしいと思う。

 

さんにんめが「ピック&ロール」というB3リーグ・横浜エクセレンスのふたり組。

2021-22シーズンを終えて、エクセレンスはマスコットを持たないチームとして進んでいくんだろうと思って静かに眺めていたところに突然告知された。それもふたりも同時に。「みえるかtex・・・ここにお前を超える逸材がいるんだ・・・それもふたりも同時に・・・」ではなくて。

お披露目日は平日開催だったため見に行けなかったものの、一度権利上のトラブルで失ったチームが新しく迎えるマスコットということもあり、不安と期待の入り混じった気持ちで見に行くことにした。

新規のマスコットであるから、もっとお仕事的に動くのかと思ったけれど、実際には過去にマスコットを持っていたチームだからなのか、かなりスムーズに場内を動かしていた。びっくりしたと同時にどこかで「tex」を感じてしまう部分もあって、楽しいんだけれど切ない。これから新しく出会っていく人達にはとても親しみやすいマスコットに育っていくんだと思ったし、そうなって欲しいと切に願う。そして前のような悲しい出来事が起こらない事を強く、強く願うばかりです。

 

結果として別々の道を選んだ人たちがどちらもマスコットという存在を選んでくれたことはとても嬉しく思う。

きっとそう遠くない未来に「ユナイト」と「ピック&ロール」が出会うことがあるんだと思うし、できればその場所にはいたいと思う。

その時にはみんなが楽くあることだけを願います。