フランク・デ・ブールという監督

2016年5月12日、5年半アヤックスの監督を務めたフランク・デ・ブールがアヤックスを去ることが正式に発表されました。
2010-11シーズン半ば、それまで監督を務めていたマルティン・ヨルのチームパフォーマンスの不安定さをうけての辞任により、チームを引き継ぐ形でシーズン途中からの指揮。
また、それまでユースや代表のコーチとしての指導経験はあったものの、実質初采配ということで、期待半分、諦め半分で見ておりました。
監督就任の初戦がいきなりのチャンピオンズリーグ、ACミランということでかなりのプレッシャーの中だったのではと思われましたが、チームは0-2で勝利。これ以上ない結果での監督スタートとなりました。
それからは、2010-11、2011-12、2012-13、2013-14とエールディビジ4連覇、また、同時に2013年ヨハンクライフシャーレ獲得と5つのタイトルを獲得。
2014-15、2015-16は例年のように主力選手の移籍が相次ぎ、苦しいシーズンとなりましたが、両年とも2位としっかりとした成績を残していきました。

初のトップチーム監督ということでプレッシャーはかなりのものだったでしょうが、アヤックスがそれを支えるようにアシスタント陣にも現役時代をともに戦った選手を集めることで、少しはそのプレッシャーを和らげていたのだと思います。代表的な人物としては、デニス・ベルカンプ、エドウィン・ファン・デル・サール、マルク・オーフェルマルス、ロナルド・デブールなどでしょうか。

さて、そんな多くの栄光を短期間で残してきたフランク・デ・ブール。
監督の采配としてはどうだったのでしょうか。

まずは監督としての実績です。

263試合
158勝(約60%)
58分(約22.1%)
47負(約17.9)
クリーンシート108(約68%)
得点数557(平均約2.12得点)
失点数263(平均1失点)
リーグ優勝4回
スーパーカップ1回
※数字はVoetbal Internationalの数字を参考にしています。
 試合数が262というものもありましたが、あえて多い方を取っています。


かなり立派な数字です。
強豪チームだからという部分もあるかもしれませんが、それ以上の結果ではないかと思います。
それではこの数字も加味して、フランク・デ・ブールの監督としての手腕を考えて行きたいと思います。


単純に考えて、「かなり勝ち点の期待できる監督」であると言えるかと思います。
リーグ戦での成績は申し分ありません。
年間通してのチームの組み立ては得意なのだと思います。
ところが、実績のようにカップ戦では優勝経験がありません。
また、CLリーグや、その後のELでも予選を通過したことがありません。
勝ち抜き形式での試合が得意なのではないかもしれません。
ですが、カップ戦でも2度決勝までコマを進めていますので、一概にカップ戦が苦手と言うこともありません。
ちなみに、KNVBカップは基本的にデ・カイプでの試合になりますので、チームとして苦手というのがあったかもしれません。
CLについては例年なぜか「死のグループ」と呼ばれるようなグループに入ってしまうため、やや仕方ない部分があります。
それ以外のCL、ELでの敗戦はちょっとひどいですが・・・。
※アウェイ戦ではベルカンプが飛行機の関係でベンチにいませんが、あまり結果に大きくかかわってはいないと思われます。

「年間のチームとしての指揮が得意らしい」となんとなく感じたところで、選手起用や試合中の指揮はどうでしょうか。
選手起用に関しては、アヤックスの特性上どうしても「世界でも名だたるトップ選手」のような選手がおらず、基本的に下部組織からの持ち上がりや、他リーグで活躍している若手選手、または過去には高い実績を残しているが現在はくすぶっている選手を使うことが多くあります。
国内ではお金のある方のチームではありますが、国外と比べてしまうとどうしても及ばないところがあります。
この限られた選手の中でやりくりしていくことが上手なのかと思います。
実際、アヤックスのスターティングメンバーの平均年齢が22〜23歳なことは少なくありません。


スターティングメンバーに関しては基本的には固定です。
開幕のメンバーでほぼ年間通して試合をします。
ターンオーバーで選手が変わることはありません。
下部のチームとのカップ戦などでいつもと違うメンバーになる程度です。
また、結果が出ている選手を主に使います、たぶん。
前の試合などで結果を出している選手から順に起用しているように感じます。
ここが「たぶん」であるところは、結果の出ていない選手が多く起用されたり、結果が出ているのに起用されない選手が割りに出てくるためです。
もっと出場したほうが結果が出せそうな選手がベンチを暖めていたり、果てはベンチ外になったりすることがあります。

下部組織が充実していることで怪我などで選手が離脱するような緊急の際は、下部で活躍している選手を起用することも多くあります。
しかしながら、下部組織から緊急で呼ばれた選手は「研究されていない」ことが強みになっている部分もあるのか、2年目から苦しむ選手が多くいるのも目立ちます。シーズン序盤から持ち上げられている選手に関しては、その後も活躍することが多いです。


試合中の選手起用については「交代が遅いのでは」と思われる部分が多々あります。
また「なんでその選手を変えるのか」と思われることも多々あります。
ありますが、その選手がしっかり結果を残したりするので、批判しづらい部分はありますが・・・。


手腕とは関係はありませんが、同国内のAZさんにはほぼ毎年選手を獲得させていただいているのでAZさんには感謝です。
仮に、今後ビッグクラブと呼ばれるようなチームで指揮を取ることになった場合にはどうなるのかはわかりません。

次に試合での組み立てやフォーメーションについて。
こちらはオランダの伝統的な4-3-3もしくは3-4-3を好んで使用します。
パスを多く繋ぎ支配率を高めて主にサイドから崩していくプレイが多いです。
ここはオランダならではなのかもしれません。
こちらも今後どうなっていくのかはわかりません。
また、奇策のような選手起用を時々使用ます。
ゼロトップや、大事であるはずの試合で結果の出ていない選手の起用など、まれに「なんだそれ?」と思わされます。
指揮を執り始めたころは試行錯誤もあったので、うまくいっていた部分もありましたが、後半になるにしたがってうまくいかなくなってきていました。このあたりはまだ、経験不足なのかもと思われます。今後に期待です。


起用する選手では、足の速いウインガーとポストプレイが得意なフォワードが好きなように感じます。
サイドから崩すプレイが多いためかと思われます。
中盤は主に「つなぐ」役割が多く、試合中ずっと走れる選手が好まれていると思われます。
また、プレイに意外性が出せそうな選手が好まれているようです。
ディフェンスに関しては平均失点1ですが、実は「キーパーの力」に助けられているような気がします。
わりとスカスカしたディフェンスになりがちなところを代表レベルのキーパーで守っている感は否めなかったです。
ただし、1人CBが信頼できる状態であればディフェンスが引き締まってくれています。
ディフェンスラインには基本的にSB2人・CB2人で、CBの片側はSBを兼業できる選手が重宝されるようにも思います。


いわゆるクライフイズムなんでしょうかね。
何点取られても、それ以上に点を取って勝てばいいのようなイメージでしょうか。


試合中はよくベンチから出て声を出しています。
割と集音マイクのそばに立つのかよく、選手名が聞こえたりしました。
あと、指笛が得意です。
ベンチで隣のコーチとしゃべっているところもよく映りますが、座っている時の多くは首だけ左右にキョロキョロして試合を見ています。
監督としてはまだ若い方ですし、時々選手に混じってボールを蹴ったりと(アキレス腱切りましたが・・・)選手に近い監督なのだと思います。


今後は別のチームで監督に就くことになるのでしょうが、頑張ってほしいと思います。
Frankbedankt!